白球の青春

「数学の難問が解けるようになったときのうれしさ、楽しさは、誰ものが身に覚えがあるだろう。しかし、その楽しさに行き着くまでの過程は苦しいものだ。誰かが厳しく指導してくれないと、途中で投げ出したくなってしまう。途中で投げ出せば、楽になるが、本当の数学の楽しさは、いつまでも知ることはできないだろう。本当に楽しいからこそ、自分で考えて、どんどん難しい応用問題を解いていこうとする。それは野球も同じことだ」というのは、横浜高野球部元監督の渡辺元智氏の言葉だ。                            

先月末、周南市で行われた秋季山口県高校野球大会決勝戦。晴れの舞台へ進出した母校野球部を応援するために駆け付ける。猛暑の中、必死に練習して鍛えられたチーム同士。夏の県大会が終わって2ヶ月くらいなのに、それを微塵も感じないチーム力の高さが光っていた。試合は事前に想像した以上にがっぷり四つの大接戦。ピンと張りつめた空気が肌に突き刺さってくる。真剣勝負のプレッシャーが球場全体を覆いつくし、その中で全力を出し切ることに集中させるのだった。

ネバーギブアップ、決して決して負けたくない。あまりにも勝利への思いが強くて、言葉に出さなくても伝わってくる。両チームの全身全霊のプレーは、ただただ息をのみ見入るしかなかった。やっぱり、若者は今この瞬間にすべてを燃やせる生きもの。純粋に白球を追い続ける姿は、それだけで美しいパフォーマンス。爽やかさもあり、痛々しくもあり、スリリングでエキサイティングでもある。あらためて高校球児は限界知らずで、驚異的な粘りで戦い抜いた両校ナインに、大きな拍手を送ることともに、その戦いぷっりに敬意を表したい。これもこの夏の大会で、県内のチームが準優勝したことで意識が高くなったのだろう。高校野球の素晴らしさを満喫できた1日。しばらくは余韻に浸りたい。