空気

ただいま Do a Frontで開催中の「ギャラリーシマダ アーカイブ展」。美術家 末永史尚君が数年に渡って調査研究してきた資料が展示される。その目玉というのか、ギャラリーシマダで行われた数多くの企画展から、末永君が13件ほど選んで制作したミニチュアの模型。ギャラリースペースを縮小サイズで厳密に再現して、実際に天井からのぞいて見るような味わいがあった。私はリアルタイムで観たものもあって、懐かしく思う気持ちが湧いたが、それよりもこの模型自体がひとつの作品として成り立ち、じっと観ているだけでいろんなこと想像させられた。

やはり、そうなのだ。末永君のs創作活動の歴史を辿っていくと、目に見えない美の空気を手で拾い集めて、日常にある見慣れたものに不思議な生命力を与えている。そう、日ごろ見落としやすいものをモチーフにして、常識や既成概念に縛られずに、感性がさぼらさないように刺激してくれる。素材の持つ良さを十分に活かしながら、独自の切り口から新鮮な空気を感じさせていくのだ。そんな素敵な空気を醸し出すからこそ、再現した模型から豊かな雰囲気が伝わってくる。ギャラリーシマダの約20年間のアートシーンを楽しく想像させてもらえた。美術作品は眺めるものではなく、空気に触れて感じるもの。空気を吸って生きる人間だから空気は武器になるのだろう。