唯我独尊

山口県立美術館が1981年9月に発行した美術館ニュースに、「伝統の構造 デュッセルドルフ通信(Ⅰ) - 若い作家 ー」と題して、当時20代後半でドイツ留学約3年半だった美術家 嶋田日出夫さんの寄稿が載っていた。それによると、作品は県または市の文化財産だと考えて、ドイツ各都市に美術館があるくらい美術は盛んで、そして、目利きのキュレーターによって作家と作品を発掘しては、展覧会を企画したり作品購入したりと文化活動支援の手厚さに感心させられたとのこと。
また、ケルンであった世界各地から過去40年間の主要作品を集めた展覧会について以下のように持論を語る。現代美術でドイツの影響力を高めるために、大々的な展覧会を行うとしたため他国が反発。予定より出展数などは減ったものの、約300人を超える作家たちの作品を揃えられたことで、現代美術の流れを捉える上で大変有益なものになった。しかし、今現在も新作を発表しているベテラン作家の作品評価が古いままで更新されず、ややもするともう終わった作家のように取り扱のはおかしいとした。
 さらに、『今日』という場があるにもかかわらず、今日という状況の一面しか捉えていない。そのうえ、今日というものを時の流れの中で剥離してしまった存在として感じてしまう。自分にとって現在であるものが、いつの間にか過去のものになってしまうような心寂しさが残る。たしかに過ぎ行く時間をどう重ね合わすのかは難しい問題。とは言え、右から左に処理するのは残念でならないと、美術へかける熱い思いを赤裸々に語っていた。そして、この3年後に帰国して、ギャラリーシマダオープン。東京とドイツで学ばれたことが踏み出す力になったのだ。それゆえに、現代美術の大きな波を逆輸入で持ち込まれたのだろう。