いま生きているという冒険

写真家 石川直樹さんの16年前の著書『いま生きているという冒険』の中に「チョモランマの頂上付近では、誰もが一人の生身の人間として自然と向き合わなければなりません。お金持ちもそうでない人も、王様もサラリーマンも、年上も年下も関係ありません。今この瞬間、この場所における自分自身のありかたが問われるので、みんな真剣だし、命がけです。

日常生活ではつい忘れがちですけれど、こういった心持ちで常にぼくは接したいと思います。こんな恐ろしい場所に毎日足を踏み入れるのは嫌ですが、でもあらゆる場所がチョモランマの頂上のような場所だったら世界にどうなるかな、と少しだけ考えることもあります」という一節がある。

この2日間、そんなに長い時間ではないけど、石川さんと一緒に行動していて一番感じたのは、いつも適切な距離感から関わり合うこと。これはお互いの力が上手く合うするために、適度な緊張感によって姿勢を保ち、いつでも最善が尽くせるようにしている。いわゆる一歩間違えて足元を踏み外せば、地獄行きの高地登山を繰り返すうちに、いつの間にか身に付いたのだろう。つまり、何ごとにも真剣に取り組む意識が根付いている。上記の言葉は決してお飾りではなく、実践していることがよくわかった。こういう生き方は簡単そうでできないから素直に学ぶべきであり、誰にもできるように努力しようと心を引き締めた。