習慣は自然の如し

美術家を目指す若者には、よく頑張っているとか、一所懸命であれとかいう言葉なんて必要ない。なんてたってなるの難しい職業であるから、気合いを入れて頑張ろうと思わなくても、めちゃくちゃ頑張っているし、とにかく一所懸命にやっていくしかない。

故に、美術家を目指す若者はずいぶん真剣に生きているように見えてしまう。しかし、本人にしてみれば、真剣でも真面目でもない。ただひたすら創作に取り組んでいるだけ。美術家になるためになんでもないような当たり前のことを徹底的に行っていくのみ。他人から見れば大変なことでも、本人にしてみれば苦労でなかったりする。

昨年の2月23日に30歳になった吉村大星君。中学卒業後に、父親で画家の吉村芳生さんに弟子入りして、創作の世界を飛び込む。周囲の心配する声をよそに、大星君は美術の道をこつこつと歩んで、いくつものの試練とめぐり合いながらも、その都度、成長を繰り返し、乗り越えていく。そして、悲願の県美展大賞に輝き、誰もが認める評価を得ることができた。けれども何も変わらない。自惚れることもおごり高ぶることもなく、次の県美展で招待出品で展示することに思いを巡らせていた。これからもその姿勢は変わらない。青年期の習慣はいつまでも抜けないだろう。