輪廻

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その昔、市内であったグループ展で不思議な作品と出会う。それは真四角のキャンパスに黒鉛筆のみで描かれた線画。遠くから見れば全体はぼんやりとした灰色。そこから少しずつ近づいたら上から下へ縞模様の縦線に見えてくる。さらに目の前まで行くと、縦線は全て点線であるに気が付かされる。作品は鑑賞者の立つ位置によって、「見えるもの」、「感じるもの」が違ってくる。スコットランドの美術家で大学教授のアラン・ジョンストンさんの作品。そのモデルは常栄寺・雪舟の庭だという。四季のよって風情が変わり、また、その時々の心情によって変化していく、わびさびの世界を絵画で表現したのだ。嗚呼、目から鱗が落ちた。たった1日、それもほんのわずかな時間の交流で、美術に対する意識や考え方も変わった。
一昨日、国際展の報告会でお話しを聴いた岩崎貴宏さん。彼は3年間留学してアランさんの元で美術を学んだ。自分の創作の方向性を探るために教えを仰ぐ。約20年前にヴェネツィアビエンナーレを視察して、そこに出展できる日を夢見ての行動だった。留学中、アランさんに日本文化の良さに気づかされ、このまま自分を信じてやればいいと背中を押される。また、自然豊かな人口の少ない素朴な街で創作する美術家たちの誇りに感動。アートはどこであってやれるもの。広島にこだわり、そこから世界へ発信していくことを決意した。岩崎さんのバイタリティに筋金が入った。そして、アートを愛する魂を半端じゃなく熱くした。
報告会終了後、岩崎さんは親交のある吉村大星君と会って短い会話をしていた。私はこの2人の姿を見て、今は天国にいる殿敷侃さんと吉村芳生さんが熱く語っていたシーンを思い出す。人生とは巡り巡っていくもの。そんなことを心の中でつぶやいた。