窮鼠猫を噛む

ことわざの「窮鼠猫(きゅうそねこ)を噛む」。この意味は弱いものでも、追いつめられて逃げ場を失うと、居直って例え天敵でも立ち向かい、潜在能力をフルに発揮して反撃することを言う。言い換えれば、どんなことでもピンチにならないと、最大限に能力を出し切ることはない。何とかしなくちゃならなくなった時、その困難から逃げ出さずに取り組めば、普段には想像できないような力を無意識に出せるのだ。

ところで、昨年末に佐々木範子さんにこのたびのネコ展の出展をお願いする。実は来月個展を予定しているため、準備で忙しいことは百も承知しているが、普段描くことのないモチーフと向き合うことは、新しい創造力を掻き立てることになるので、表現力の幅が広がることを期待してお誘いした。すると、想定以上に苦戦したとのこと。近所にいる猫たちをジッと見て研究したのに、思うように制作が進まなかったと告げられた。

だけど、佐々木さんは悪戦苦闘した結果、なんとかしなくちゃという思いを吹っ切って、今一度、自分自身の作風の原点を見直して描くことにする。みんなが喜ぶネコじゃなくていい。あれこれ要素を取り入れて複雑になるより、シンプルに描いた方が私らしくていいはずだ。そうやって簡素でスッキリして作品が出来上がる。余白が優美な雰囲気を醸し出す。さすがである。今できることに集中して、素敵な作品が創り出したのだ。