独学

美術家に必要な能力は独学で身に付けるしかない。面倒見のいい先生のところへ駆け込み、あれを取り入れていいとか、これをこうしたらいいとか、手取り足取りアドバイスしてもらい、めでたく成果が出たとしても、それは当たり前だが独自性のある創作にはならない。いろんなことを試したことがなければ、個性的なイメージが浮かんでくることはない。余計なことをして自らの感度を確かめ、そこから様々な感覚を発見していくことで、独自性のある発想から表現する能力が育まれていく。
だから、その昔から美大の先生たちは、簡単に褒めないようにしている。なぜなら、学生に良かれと思って褒めると、その手法ばかり駆使して、新たな創意工夫をしなくなるから。これでいいと思い込んだら、その結果、堂々めぐりに陥っていきやすい。創作はマイペースでやっていくうちに、発想がユニークに伸びやかになって、視野も広がって柔軟さが生まれてくる。つまり、誰からも教わらないことによって、素晴らしいパフォーマンスが発揮できるのだ。新しい創造とは汗水たらして、自らの手で掴んでいくもの。個性を突き詰めるために、独学で禁欲的にやることが大切だ。