漫画家水木しげると言えば「ゲゲゲの鬼太郎」をはじめ、数々の作品で妖怪文化を根付かせた第一人者である。また、人生について深く語る著者としても知られ、何十年にもわたって世界中の幸福な人、不幸な人を観察してきた体験から見つけ出した、幸せになるための知恵を七か条にまとめた「水木サンの幸福論」は多くの人に愛読されている。
この著書の中の第五条「才能と収入は別。努力は人を裏切ると心得よ」は、独自能力を求めて生きる美術家のためにある言葉だと思った。なぜなら今までにない価値観で作られたものは、一般の人にはその良さを簡単に理解してもらえず、おいそれとは売れることはないだろう。とは言え、万人受けそうな作品をいくら頑張ってみても、既存の世界の中に個性を埋没するだけで、目の肥えた美術ファンの心を揺るがすことはない。
つまりどんな作品を制作したとしでも、右から左へ対価を得ることはない。どうやれば効率よく儲かるかなんて馬鹿げた発想。それよりも本気で夢中になれるもの、好きだからこそやりたいことをやっていこう。努力することは大切な行動の1つだ。これがなければ何も始まらない。しかし、ほとんどの成功の要因は偶然だ。収入を得ることばかりにあたふたするより、もっと自由に大胆に創作することが大切だ。好きこそのものの上手なれ。美術はお金を稼ぐ手段ではない。好きでやるから面白い世界だ。このことを信じて創作していきましょう！
