決心

このたび個展を開催する深海志都香さんとは、10年前に彼女が芸短2年生の時に知り合う。当時、ギャラリーでは臼杵万理実さんが台頭したおかげで、美術家を目指す若者が目に見えて増えて、その流れに乗って姿を見せるようになった。だけど、彼女はとてもハニカミ屋さんで、何を言ってもリアクションが薄いため、最初の頃はコミュニケーションに苦労した。
しばらくして深海さんと打ち解けて、何気なく山口芸短へ進学した理由を尋ねたら、オープンキャンパスで同短大OBで講師だった画家の吉村芳生さんとお話しする機会にめぐまれ、よしここで頑張ってみようと決心して受験したと教えてくれた。だから、吉村さんが急逝された時に同級生に声を掛けて葬儀に参列する。どうしてもお礼の気持ちを伝えたかったのだ。
私はこういう豊かな人には、夢が叶って欲しいと願うばかり。そこでいろんなグループ展に誘っては、作品制作のチャンスを提供していく。仕事との両立で大変な思いをさせたが、愚痴をこぼさずに取り組めるのは、美術の世界で生きることの厳しさを覚悟しているからだ。最初に吉村さんと出会って、いろはを教わったから、少々のことでは動じないのだろう。