この春、かつて母校サッカー部の中心選手で活躍していたR君と初めて語り合う。実は約7年前にサッカー部を強豪校へ引き上げた元監督の還暦のお祝いで一緒になって、面識ができたものの、その後コロナ感染症などで出会う機会がない時が過ぎた。だから、呼びかけられて彼だとわかったとたん、もう嬉しくて微笑んでしまうだけだった。

そうして当時のことをあれこれ思い出しながら話せば、まるで昨日のことのようにお互いによく覚えている。ピッチの中で戦っていた若者と、ピッチの外で応援していた私は、一度たりとも言葉を交わすことがなかったのに、勝利を目指して思いを一つにしていた。要するに細かいことを話し合うのではなく、その時の空気を大雑把に楽しんだ。

やっぱり一番大切なのは青春を燃やして生まれた空気である。それを無理矢理言葉にしたところで、正確に描写することはできないだろう。むしろ、あーとかうーしか言えなくても、全身を楽器にして音を奏でて伝えてくる。これから生成AIがどんなに進化しても、人間が生み出す摩訶不思議な現象は創り出すことはできない。血と血で交わるから熱くなれるのだ。