ことわざの「急いては事を仕損じる」とは、ものごとは慌てて行うと、大事なことに配慮が行き届かず、かえって失敗しやすくなるため、急ぐ時ほど冷静沈着に行動せよという意味である。
近年、最短距離で美術の腕前を上げようとしている人とお会いすることがある。少しでも早く習熟することを目指して、次から次へいろんなことを拙速に行い、その結果、ほとんど何も身に付かない様子である。こういうタイプの人はかなりの確率で自分が本当に好きだと言えるものがない。要するに、その人にとっての基準になるものがないため、他の人の良いという言葉に流されて、どっちつかずの状態のまま迷走し続ける。
そこで、美術にはありとあらゆるあるワールドが存在するけれど、その中で自分が好きだと言えるものが一つあれば、それはすべてのことに通用する軸になるだろう。美術の世界はとても広いけれど、その荒波に呑み込まれて溺れてはいけない。とにかく、大切なことは慌てないこと。そして、好きこそものの上手なれで、ワクワクさせるものを追い求めて、小さな成長を楽しんでいけばいいという感じで助言した。