じたばたもがきやり続ける

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先日、来店するなり熱心に1つずつ作品を観て回る若者がいた。おそらくその真剣な表情からして、ご本人も創作活動している人だろう。そこで余計なことは何も言わず、自由に観てもらおうと見守ることにする。まったくの初対面でもあるため、変に近づかないで適度な距離感を保った。すると感心するほど長く留まって、展示作品に様々な刺激を受けながら、自問自答しているように思えた。なんとも言えない微妙な表情を浮かべて、悔しいと羨ましいの気持ちが交錯している。とても素直に感情を表す若者なのだ。ひと通り観終わったところを見計らい、思い切って声をかけてみたところ、やはり美術学校で勉強してきた若者だった。しかし、今はほとんど制作していないとのこと。収入になりづらい美術とは一線を引いて、社会人として生きることを選択した。早々に美術家になる夢を諦めたと語ってくれた。

いつまでも中2病が自然治癒できないまま、いつかは成功できると根拠もなく、ただ思い込みだけで生きるよりはいい。客観的な目線で現状を見つめることは大切なこと。だからと言って拙速に判断するのはよくない。趣味でもいいから好きなことを続けていく。プロの美術家として活動できなくても、本気で美術が好きだったら続けられる環境を目指そう。実は美術とは慣れればできる世界である。自分なりのルーティンが生まれたら、あとは応用して柔軟な発想でやることができる。「一芸は道に通ずる」ではないけど、ひとたび水に慣れてくれば何とでもなる。つまり慣れない内にコンプレックスに襲われて、勝手にやれないものと決めつけやすいもの。美術というものは意識して観続けるとだんだん観慣れてくる。観る回数が増えれば増えるほど面白くなる。若者と親しくないため、何となく軽く語った。実際に通じたかどうかはわからない。ただ、次に会えたらこの文面通りに伝えようと思っている。

■HEART2019の関連企画 県美界隈展 『花』、Y氏とともに 2020年2月13日(木)~3月1日(日) 11:00-18:00