見えざる手

昨日の午後は、多忙を極めて行こう行こうと思いながら、なかなか行くことができなかった中原中也記念館の「中也とランボーヴェルレーヌ」へ参上。数年前に始まった中也文学への習熟度は、まだまだ思い切りビギナーのレベルだけど、このところ、その時々の中也の姿が頭に浮かぶようなってきた。要するに少しくらい進歩したのだろう。

これも稚拙な質問や素朴な疑問にも関わらず、いつも丁寧にご回答してくださる館長さんをはじめ、学芸員さんたちのおかげさまだ。やはり本質的な部分を教わるとイメージが湧きやすくなる。だから、受付でチケットを購入する際に、感謝の気持ちを込めて外郎を贈呈しようとしたところ、この日はどなたも不在だったのでお渡しできなかった。

嗚呼、少し残念である。そこで受付の方にお願いしてから、展示室へ向かって歩きだしたとたん、なんと御年96歳の名誉館長がお成りになられた。猛暑なんてにも負けず、元気の姿を拝見した。おおー、これは中也の見えざる手!さすが福田屋の外郎を好んだだけにラスボスを登場させる。私は受付の方に「ぜひ、先生にも召しあがりください」と伝えて、天国で大笑いしている中也の計らいに応えた。