1985年1月発行の県立美術館ニュース22号に、当時34歳の吉村芳生さんは熱い思いを書き綴って寄稿していた。その中で目を引いた箇所を抜粋して転記する。
科学や医学は合理的な唯物的な世界。それに対して芸術は不合理な唯心的な世界。科学や医学が発達しすぎると、人類は早く滅亡してしまう。反対に芸術ばかりの世界になると、人々は心の満足だけでに浸り、働かなくなり亡びていく。食糧不足で栄養失調の子供たち発展途上国に芸術は無力なのだ。科学こそが必要なのです。反対に文明が進み過ぎた豊かな国こそ、芸術を必要とする。戦時中には芸術家はいません。平和な社会にこそ芸術は芽生えてくる。芸術は平和のバロメーター、現代社会に必要なのは科学と芸術のバランスではないでしょうか。
あの頃はバブル景気直前で、漠然とした豊かさがあった。そういう社会現象を鋭い視点で捉えて、個性豊かな言葉で表現していた。やはり画家はアートを通して社会を問う。今も読んで新鮮な響きがあって、時を超えて響くものがある。今日は吉村さんの命日。まだまだ魂は生きている。これからも刺激してください! 合掌