エール

約40数年前、新築のお祝いに親交のある陶芸家から、当時社会人を経て東京の美術学校に通っていた吉村芳生氏の大きな絵をプレゼントしていただいたY氏。音楽や美術を今宵なく愛する芸術に造詣の深い方に似つかわしい贈り物だった。
そのため長い間にわたり家宝として大事に飾っていたが、改築した際に蔵の中へ入れて、そのままになっていたので、近年新聞で大星君の存在を知り、激励の意味を込めて作品を返すことを決意した。一番ふさわしい人への譲渡を希望する。
しかし、生前にこの思いは残念ながら叶わなかった。だけど、今春に米国在住のご家族からSNSを通じて連絡があり、とても素敵なご厚意なので日取りを調整して、ついに昨日の午後、遺志を受け継いで贈呈式を行った。
なお、この作品は吉村さんが27歳に制作。リアルな鉛筆画の初期の中の初期のもの。コンディションは大切にされていたので良好な状態で、吉村さんの活動史を語る上で貴重なものになりそうだ。
それからもう一つ、ご家族の旦那さんはジャズミュージシャン。かつて吉村さんが実行委員をして、地元・山口市徳地に招いた日野皓正氏と何度もセッションされたとのこと。おそらく、生きておられたらジャズの話しで盛り上がったことは疑う余地がない。
そんな実力派ドラマーのビリーさんから最後に大星君へ「こんな由緒のある絵が戻ってきたのだから、迷うことがあるたびにこの絵を観て、勇気を掻き立ててください!」という熱いエールを送られて、美しいひと時がお開きになった。
嗚呼、やはりこの世は因果は巡る糸車。すべては網の目のように繋がっている。吉村芳生さんの1日遅れの誕生日祝いは素晴らしいご縁によって紡がれて本当に良かった。