文化とは人々の好奇心を掻き立てたり、精神的な安らぎを与えて、生きることへ喜びをもたらす。その人の触覚を刺激して活性化させて、豊かな人間性を水が自然に染み込むように、無理をしないでゆっくりと養い育てていく。または文化に触れることによって浮かび上がったイメージをとおしてのコミュニケーションを高めることができるのだ。
昨冬から今春まで山口情報芸術センター(YCAM)で行われた「Afternote 山口市 映画館の歴史」は正に文化と呼ぶにふさわしかった。美術家 志村信裕さんが山口市で約2年間をかけて、映画館がなくなってから久しい街で、当時を知る人たちの小さな思い出を丁寧に拾い集める。この街に眠っていた映画文化を発掘して紡いで映像作品にした。
あの時代の映画は最先端情報の発信基地。海外の車やファッション、音楽、生活様式など、どんな文化もカッコよくて人々を刺激した。沼さんはそんな昔話をユーモアたっぷりに語った。YCAMシネマにもずっと通っていたから、戦後の山口映画史のレジェンドの話しは面白くて笑いが絶えなかった。やはり映画は楽しむ気持ちがあれば、いくつになっても心を若く保てるのだろう。