万物は未分類

2021年9月、神奈川芸術劇場では、山口情報芸術センターで「Afternote 山口市 映画館の歴史」をプロデュースした美術家 志村信裕さんが『游動』と題して、水、光、月をモチーフに取り入れた映像インスタレーション展が開催された。当時、コロナ渦で行くことができなかったので、近くに住む竹馬の友に案内したところ、すぐに行って作品集を送ってくれた。
その作品集には「言葉や科学が生まれる前の世界では、万物は未分類で、分かち難く一つであった」という一節がある。これは基本的な本能は人も動物も植物も同じだ。理路整然としなくていい。本能に身を委ねて生きていくことは、そのものにとって一番美しい姿だと言いたいのだろう。
この理念は「Afternote」でも同じだ。戦後から高度成長していく時代は、繁栄を信じてみんな我武者羅に働いた。そんな人々に映画は最高の活力源。映画館では現実を忘れて夢を育み、また、フラットな人間関係になれた。だからこそ、その息吹に触れると心地いい。生きとし生けるすべての生命は平等だ。彼のメッセージは実に美しい。心に染みるものばかり。