高校3年間は通いであったが防府市で過ごす。本当にこの街のことをよく知らないのに飛び込んで行った。いくら情報の少ない時代と言えどもほどがある。まったく流儀は違って、入学当初から困惑の連続。ハッキリと物を言う文化にもビビリ、日常茶飯事、カルチャーショックの大連発。部活以外、大した思い出がないまま卒業した・・・と思っていた。しかし、実際はそうではなかった。当時、経験した様々な出来事が血となり肉となって私を形成している。情熱や根性はここれで磨かれ、人の個性を観察する力も養われた。知らない土地で真正面から生きたからこそ得られたのだ。おそらく防府へ行かなかったら美術に関わることはなかった。美術はタフな人間力が要求される世界。既存にある表現を突き破って、常識を壊して新しいものを創る。そんな臨界のシーンに立ち会えるのは、良くも悪くも揉まれて強くなったおかげ。やはりシェイクスピアの「運命とはもっともふさわしい場所へと貴方の魂を運ぶのだ」と言う格言のとおり縁あって導かれたのだろう。それにしても肯定的な気持ちで振り返ったら何もかもがよく見えてくるものだ。