一を聞いて十を知る

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論語の「一を聞いて十を知る」とは、ものごとの一端を聞いただけで、全体を理解できること。わずかな言葉をヒントにして、すべてを汲み取ってくれること。非常に賢くて察しの良いことのたとえだ。この世の中はいろいろなことと交わっている。さまざまなことに繋がりながら生きている。そんな見えづらい世界の破片を拾い集めて、わかりやすい表現に変換して教えてくれる人。これとこれは本質的なところが似ているため、こうしていけば面白くなっていくはずだと、機転を利かせながら具体的な言葉に構築できること。つまり情報収集と分析能力に長けている人を言うのだろう。
先日、ふとこの言葉を思い浮かべてしまう。作品展の会場の中にあった1枚の絵が誕生した秘話を知ってそう思った。それは作者が7月上旬に24時間かけて波の数を数えた日、実は彼の奥さんと子どもは夏風邪で家で寝ていた。本来ならやめるべきタイミングであったが、この天気だったら猛暑からは逃れられる。このチャンスは活かすしかない。そう決心して浜辺に陣を取って、ひたすら波と見つめ合った。後日、この時にことを子供に話して、写した画像も見せたところ、「だったらボクもやる」とペンを取ってスラスラと絵を描いた。おおー、すごい!なんと自分よりも面白いぞ。思わず手放しで喜んでしまったそうだ。やはり美術家としての血統がいい・・・ではなく、お互いにインスパイアしあえる関係だからこそ生まれたのだ。そこにはイマジネーションを豊かにする意思疎通がある。一を聞いたら夢が何倍にも膨らんでいく。親子の繋がりの濃さによって描かれた素敵な世界。素直でいることの素晴らしさを学ぶことができた。
■保手濱 拓 時をなぞろ 2019年8月21日(水)~9月1日(日)9:00-18:00(最終日は17:00まで) 休館 8月26日(月) クリエイティブ・スペース赤れんが 山口市中河原5-12 http://www.akarenga.justhpbs.jp/