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個展で展示する作品をつくリ上げるためには、体力よりも忍耐力の方が必要になる。なぜなら、作品に生命力を与えるひらめきやアイディアが頭に浮かんでくるまで待つしかないからだ。美術家はいつも自分の作品に対して大まかなイメージを持っている。どういう個性を活かして表現すればいいかなんて、個展するレベルの人なら誰でも把握している。その大枠の中をどうするのかによって、作品を観る人の印象や味わいは違ってくる。これまでの経験をベースに、今感じることと取り合わせ、新しい創造の発生できるかどうかが、作者の腕の見せどころと言えるもの。独自性のある構成を編み出すことで、作品はいきいきとした存在になっていく。

ところで、このたびの臼杵万理実さんの個展で展示作品の特徴をひと言で言い表せば「原点回帰」。それも正真正銘と言っていい、子供の頃から描くものの進化系。そもそもモチーフの少女と猫は幼児の時から、ずっと描いている。偉大なるワンパターン。だのに、元気いっぱいな雰囲気が伝わり、単純に面白さを楽しませてくれる。瑞々しいインスピレーションが漂い、バイタリティー豊かな躍動感がある。おそらく、彼女の気持ちがひと皮むけてきたから。なにかの手ごたえを素直に感じている。自分の中に創作意欲を燃やす核ができたのだろう。このままこつこつと自分らしさが増えていくことを期待したい。