誠心誠意

臨済宗中興の祖 白隠禅師が常とう語として愛した「動中の工夫は静中に勝ること百千億倍す」。これは心を静かにして坐禅するだけが修行ではない。日々の炊事、洗濯、掃除などのことに、誠心誠意を込めて体を動かして汗を流すことも立派な修行になる。すなわち、日常のすべての行動のなかにも、悟りへの道が開かれているという意味である。

美術家も同じようなことが言えるだろう。なんでもないような日々のなかに、創造するために必要な学びが存在する。ちょっとした読書やぶらぶらする散歩をはじめ、いろんなタイプの人と会って、ざっくばらんにおしゃべりする時も、美術へ対する強い意識があれば、いくらでも自分の感性を豊かにするために、大事な時間になってくるはずだ。

つまり、いつもどんな時でも創作ばかりしていられるほど甘くはない。ずっと美術と向き合って生きることは、そんじょそこらの運があっても厳しい。だからこそ、普段の生活行動にも心を配っていくこと。目の前のことに夢中になったり、一生懸命になって取り組めば、その頑張る気持ちが美術にも活かされてくる。なにごともチャンスへ変えていけばいい。