民藝

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「ものを見極めるのは瞬時でよい。早い方がむしろ確かだといえる。まず見ることが肝心である。見る前に知る働きを加えると見る働きは曇ってしまう。そうすると美しさはなかなかその姿を現してくれぬ」というのは、ものをじかに観ること、直観で感じることを大事にして、民藝運動を起こした思想家 柳宗悦(やなぎ むねよし)の言葉だ。

昨日のNHKEテレの日曜美術館は「観て愛して集めて用いて考えた 柳宗悦と民藝の100年」。暮らしに用いられる無名の雑記にこそ非凡な美が宿るとし、その無垢な形の美しさに衝撃を受けて、日本列島の津々浦々まで旅に出かけ、「それまで誰も気にとめなかったもの、日々の暮らしで使うために作られたもの」に美の本質を見いだし、民衆的な工藝の素晴らしさを言葉でたたえていった。

また、「ものを使いこなさずば、ものの美しさを深く味うことは出来ない。だから見ることより使うことの方が、もっと美しさに近づく。よい使い手は美しい品物の創造者だとも云える」とも言い、作品の個性を楽しむ観賞者の必要性を唱えたのだ。やはり作り手と使い手のよりよい関係によって文化が育まれていく。美術は美術家と鑑賞者との共同作業によって生まれるハーモニー。自分自身で決められない世界だからこそ、作品について確かめあったり語りあったりしながら、お互いに美的感覚を磨くことが大切になるのだ。