夢見るように

1969年7月、香月泰男先生が米国宇宙船アポロ11号が月面着陸した際に「月も、もはや清浄感がなくなった。知り得て美しさの増すものもあろうが、未知のままの方が美しいものが多くある」という言葉を残した。
人はよくわからないこと、何かが欠けて足らないものに、あれこれと想像力を使って、思いをめぐらす習性がある。たとえ先進的な人工知能などの科学の力で、それらのことを明らかにしたところで、どうせ科学なんて万能ではないと軽くそらし、もっと奇跡的なものがあることを信じて、見えないものへのドラマを楽しむ遺伝子を持っている。
だから日常にあるいろんなものにミステリアスを発見して面白がってみよう。いわゆる科学的な根拠にひれ伏して従うより、おとぎの国を旅するように浮世離れをして、ふわふわした夢に心地でいる方が人らしい。つまり、これは美術家と呼ばれる人たちのこと。夢のセールスマンとして、その創作は好奇心を掻き立てて、夢を見ることの素晴らしさを伝えるのだ。