いちご白書をもう一度

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小学高学年の頃に流行ったフォークソングに「いちご白書をもう一度」があった。いわゆる社会へ溶け込み大人になろうとする若者のノスタルジーが悲しく描かれた歌だ。当時、子どもだったこともあり、テレビで熱唱する歌手の姿を見ても、何がいいのかがさっぱりわからなくて、冷ややかな態度をとっていた。ただ唯一「授業を抜け出して」のフレーズが耳に残ったのは、学校の勉強が嫌いだったから共感してしまったのだろう。
 
その後、20代前半に仲よくなった同じ年の新聞記者と、たまに飲んだ後にカラオケへ行った時に、彼がよくこの歌を歌っていた。さすが大学では軽音楽部に所属していたので声が響き上手い。そして、自分もこの歌のモデルと同じくらいの年齢になったから、歌詞の意味合いや心模様がしみじみと伝わってくる。就職活動のために髪を切るなんて当たり前で、それが社会人として生きるには必要なことだと思えるようになってきた。
 
昨日、ふと「いちご白書をもう一度」が頭に浮かんだのは、このたびのグループ展に学生時代から親しい面々がいるためだ。彼らが山口大生の若い時に知り合い長く付き合っている。この間、べったりでなく付かず離れずの良い距離感を保ち、近年、再び集って美術への夢を語り合うようになった。大人として社会の中で生きていくには、夢を捨てて現実と向き合い、仕事をすることは大切なことである。しかし、人生一度切りなのだから、悔いのないように、できる限りの範囲で挑戦していこうじゃないか。仕事と美術をバランスよくやることを目指していく。つまり、2つの仕えることが良好になり、めぐりあわせを良くすること。自分らしい仕合わせを求める姿に、今も終わらぬ青春を感じて、この歌を思い出してしまったのだ。