夢見る時

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子供の頃、「これが青春だ」という学園ドラマの再放送があって、「大きな空に梯子をかけて 真っ赤な太陽 両手で掴もう」という主題歌の歌詞が耳に残る。なぜなら、梯子は一般的なものでも一番上はそれなりに高くなる。それが大空へかかる梯子なんて、そこから見える景色は恐怖以外の何ものでもない。こんな馬鹿馬鹿しいことが思い浮かぶ。これをよく言えば豊かな想像力の持ち主。正しく言えば可愛げのない屁理屈屋だろう。その後、20代前半にこの歌の続き、「恐れ知らないこれが若さだ そうともこれが青春だ」を再び耳にして心が熱くなる。やはり血気盛な時期は単純明快。それ故に、美術の世界で頑張っていこうと決意する。自分ならできるはず。不可能だと思わず、可能だと思い込む。とにかく、不安より期待しかなかった。自分には山口のアートシーンを切り拓ける力があると信じて疑わない。どんな困難が待ち受けていたとしても、乗り越えていけると考えていた。これは明らかに自惚れ。嗚呼、なんとも恥ずかしい。ふと、こんなことを思い出したのは、先日特別に展示した高校生の作品があまりにも眩しかったから。上手くいくかどうかなんて気にしない。白いキャンパスの目の前にしただけで無我夢中。好奇心が搔き立てられて、どんどんエネルギーが湧くばかり。絵を描くために一番必要なのは楽しさだ。技術力や表現力、想像力などではない。自分らしく一生懸命にやればいい。完成すればそれでいい気持ち。そんな若さを武器した個性をいくつでも発見できる素敵な作品だ。会期中、作品を観ているといろいろなことが伝わってきた。そして、夢見る時間の大切さをあらためて思い知らされる。つまり、若さとは未来について楽観的になれること。可能性を肯定して熱狂できること。もう一度、この原点に立ちかえって頑張ってみよう!