色即是空 空即是色

この世の中、まだまだわからないことが多くて、言葉にならない不思議なことだらけ。さまざまな英知を結集しても解明できないものであふれて、なんとかくひとつの大きな流れは感じられるけど、ひとつひとつを具体的に説明することはできない。だから、この世に色即是空いくつかの要因はわかるけど、全体の要因についてはよくわからない。実体しているあらゆるものごとや現象はすべて実体ではなく、何もなく空しいさまだと言えるのだろう。

この言葉の対句になるのは空即是色。すべての景色は移ろいゆくから、そこに存在があるように見えて、次ぎの瞬間には変わってしまうようなもの。それゆえに実体していないことが、この世のあらゆるものごとや現象を形成している。流動的に変化することによって、万物に生まれ変わることができる。刻々と変化するから刹那的でもあるが、次ぎの瞬間には変わってしまうから、この瞬間がとても愛しくなったりもしてしまう。すべての景色は移ろいゆくから美しいのだ。

美術家はこれらのすべてのことを踏まえながら創作しようとする。連続して流れる時間の流れを切り取って、つかまえて表現したいという思いから駆られる。それがきっと素晴らしいものになるはず、自分の手の中に入れてみたい、という好奇心と意欲に満ちている。人類がつくり上げてきた文化の根底に、色即是空と空即是色の教えが横たわっている。つまり、不思議に感じるもの、新しいものを発見した時の驚きや喜びとは、空の世界にちょっと触れただけで湧き上がるものだ。ひとつのものから無限のものを感じて、ポジティブに創作するエネルギーになっていく。