大器晩成

口』に『十』と書いて、叶うという字になる。これは願っていたことがそのとおりになるには、何度も何度も目指すことを口にして、挫けずにやり続けることが大切だということを表す。要するに、小さなことでもこつこつと積み重ねれば、やがて大きなことができるという意味で、叶うは使われているのではないか。

ところで、このたびの県美展で、難波瑞穂さんは木版画の図柄を下絵に使い、その陰影や強調したい部分に刺繍を施し、彼女の内面世界を赤裸々に表現した作品「原風景」を応募したところ、審査員に目に留まり栄えある優秀賞に輝く。私は彼女が山口大学生の頃に知り合い、企画したグループ展に参加してもらったことをはじめ、美術家を目指して地道に創意工夫する姿を見ていただけに、本当に良かったと手放しで喜んでしまった。

 難波さんは学生時代から不器用で上手く立ち回るタイプではない。だから器用なふりはせず、ありのままでいい。どこまでも自分らしさを貫くこと。不器用なら不器用なりに隠さずにやればいい。ひとつのことしかできないから、ひとつことだけに集中していく。何をやってもトロいのなら、それ武器にして活かそう。このまま、自然体のまま、マイペースであれ。堂々と大器晩成の道を歩んでいこう!未来を楽しみにしている。