ユーモア

いわゆる「ユーモア」とは、人の心を和ませるジョーク。気の利いた言葉で笑わそうとすることで、その場のムードを明るく変えるエッセンスである。ただ笑いをとるのではない。そこには品格や気遣いが必要になる。鼻先をくすぐるような茶目っ気があるからこそ、コミュニケーションもスムーズに進めていける。だから、ユーモアのセンスを持っていると、ものごとを多角的な視点から楽しむことができる。

ところで、このたびの県美展で前年度大賞受賞者として特別展示した大村洋二朗君。その展示タイトルは「《明るく 楽しく 分かりやすい。安心安全 人畜無害な展示》」。第68回から7回連続入賞してきた個性豊かでとっつきにくい作品を反省し、パッと観ただけで親しみを覚えて、なんとなく現代美術っぽい作品群を並べて、鑑賞すればなんとなく理解できた気になれるという、一般の方々のご要望に応えた内容にしたと、美術館情報誌にコンセプトが書かれてあった。

もちろん、これは大村君ならではジョーク。昨今、美術展で少しでも難しいと感じたら、観ることをやめる人へのアンチテーゼ。とにかく、展示作品のそばに細かすぎる説明文を貼って、文章で満足してもらおうとする風潮への皮肉。手の込んだユーモアだとも言えよう。

しかし、このユーモアが通じない人たちもいる。山口県は指の銃で「バーン!」と声で打ったふりをしても、撃たれたふりをして倒れない人の率が高い。それ故、大村君のユーモアが通じない人たちもいたように思う。まあ、それでもいいじゃないか。恐れずにブレずにやりきったことを称賛する。かしこぶらずにチャレンジしたことは、やっぱり素晴らしいのだ。