幸せって

美術家は作品が売れたり、公募展で賞を獲得すれば幸せだという考え方は、その道を志す若者に教えるべきことではない。なぜなら、その時に得られるお金や評価による表面的な幸せは、時代や社会情勢が変わることによって、簡単に覆ってしまうからだ。その時は気持ちよかったけれど、後で冷静になって考えてみたら、それでよかったのだろうかと思うことがある。

なぜなら、常に新しい価値観が生まれてくるから。その瞬間の喜びはすぐに泡になって消えやすい。例えば、目標を達成したとしても、それは絶対的なゴールではない。その目標を達成した途端に、その上を目指して挑戦が始まる。まるで幻のようなもので、掴もうとして掴むことができない。いつまで経っても幸せだと言い切ることができないのだ。

つまり、創作で何かを達成できなくても、創作できることが自体が幸せだと、気づいて満たされることが大切だ。言い換えれば、創作に一所懸命になっていけるのなら、それは美術が天職であることの証明あって、その過程の創意工夫は至福の時である。つまり、人生はオリジナリティーに溢れていて、その主役であることを自覚すれば、成功不成功なんて大した問題ではないはずだ。