根っこ

「仕事には本筋の仕事と、本筋でない仕事とがある。本筋の仕事とは根のある仕事、本筋でない仕事とは器用だけの仕事のことだ」という高村光太郎の名言がある。

いわゆる本筋の仕事とは、土に植えられた根のある花と同じだ。なぜなら、どんな種類の花でも、種を蒔いて根を伸ばすまでは、それ相応の時間と労力がかかる。もちろん、必ず咲く確証はないけれど、粘り強く根を伸ばすことで、ひとたび花が枯れたとしても、翌年に新しい花を咲かすことができる。つまり、じっくりと長い年月をかけて、花づくりの技術や知識を身に付けて、生業にしていくことである。

これに対して本筋でない仕事とは、根のない切り花のようなもの。その場所でその時にその瞬間にきれいな花を楽しめたらいい。ただし、手間暇かけて花を育てることはやらないで、お金を払って咲いた花を手に入れれば、外見的には根のある花とよく似ているけど、本質的にはまったく異なっている。根っこがないから枯れると次は咲くことはない。その場しのぎでは見せかけだけの仕事人にしかなれないだろう。