大人

その昔、昭和の時代は年齢の若いことがネックになって、なかなか能力を認めてもらえなかった。エネルギッシュでキラキラした若さの輝きよりも、豊かなベテランのいぶし銀の光の方が評価される。それ故、美術へ挑戦する若者は背伸びして、如何にもキャリアがあるような振りをした。新鮮な果実から弾けるような若さなんて、どんな人にも一定の時期に普通に与えられている。それに比べて熟練者たちの研ぎ澄まされた渋い光沢は、比較にならないほどの価値があるものだと考えられていた。
つまり、その世界でしっかり腕を磨いて、大人になることを奨励していた。若者は若者特有の斬新なものを創り出すこともあったが、力任せのインパクトは一過性で終わる。大人になるとは一人前になること。才能を磨いて確固たる作品制作して、大人を唸らすことができれば免許皆伝。いわゆる大人の仲間入りができた。令和の時代、大人の基準は曖昧だ。若いと言われるために前がかりな人が目立つ。もしかしたら、大人になりたくないのかも。熟すことを理解しなければ、何億年も生きても達成感はない。成熟や熟達の域に達して、初めて上がれるリングを目指そう。