本能的な衝動

岡本太郎の著書に「絵を描くということは、疑うことのできない、すべての人のうちにある本能的な衝動なんだ。歌うこともそう。叫ぶことも、踊ることも。表現欲というのは一種の生命力で、思いのほか激しいもの」という名言がある。

たしかにこの言葉のとおりで、例えばオーストラリア北部の辺境地域で先住民族アボリジニの岩壁画は、約1万5千年前までに描かれたもの。文字は約4千年前に誕生したため、何か見て感じたことを伝えようとすれば、洞窟の壁に絵を描いて表現するしかなかった。

人は見たり、触れたり、あらゆる感覚を持って、できる限り感じたものを表現したい生きもの。すなわちその衝撃を抑えることができない性分がある。いくら知識があっても衝撃を感じなければ、伝えたいことは曖昧なものになる。つまり、誰にでも素晴らしい本能があるから、上手く知的に説明できなくても、身振り手振りでコミュニケーションが成り立つ。その瞬間に湧き上がるイメージを活かせば、不思議なことに未熟な表現手段でも伝わるだろう。