曖昧

いわゆる美術鑑賞する際の感想は、しばしば曖昧な言葉で述べられることが多い。なぜなら、作品を観て感じたことは人それぞれ違うため、どう解釈するかという点について、こうでなければならない答えはなく、いろんな意見があって然るべきだから。その人の育ってきた環境や生まれてきた時代による解釈の仕方を尊重し、自分と異なる価値観をはじめ、馴染みのない発想やセンスを認めることで、これまでと違ったいろいろな側面が刺激されて、新しい世界に目を向けるチャンスに繋がる。

だから、お互いがお互いの美意識を認め合い、さまざまな視点から美術を楽しむために、潤滑油の曖昧さが必要になってくる。こだわりや好き嫌いなどにとらわれず、自由度の高いグレーゾーンに身を置いて、コミュニケーションの可能性を広げていく。柔軟な心さえあれば、自然体に触れられて、美術談義は活発化する。無理して全部を言おうとせず、いまわかる所まででも語れば、知恵を絞り合うきっかけになるだろう。つまり、少しずつでも自分の言葉で表現しようと努力することが大切になるのだ。