ご縁

10年前、ギャラリーに出入りしていた若者が企画を持ち込む。それは芸能界で隆盛を誇っていたAKB48総選挙を参考にして、美術家を目指す若い女性たちに出展を呼びかけ、ハガキ売上枚数を競い合うグループ展だった。なんともベタなコンセプトで、お堅い人の多い土地であるが故に、後ろ指をさされるだろうけど、なんだか面白うそうだからGWに3日間ほど開催することにした。

当時、私は漠然と若者にとっていい時代が来ると思っていた。なぜなら、上の世代は世の中の変化をついていけず、どこか閉塞感が漂っているから。過去の成功体験にあぐらをかいて、SNSによる情報発信やデジタル表現なんて、興味を持っていない人の方が当たり前。とにかく、これからもこれまでと同じままと楽観さがあって、黒船がすぐそばにいることに気づく様子はなかった。

そんな時代の変わり目にグループ展を通じて、この時が初めてだった若者たちと知り合う。まったくの偶然に出会いだったのに、その後ここで個展するなど、本格的に創作活動する人をはじめ、結婚式に呼んでくれたり、出産したお子さんを連れてきてくれるなど、なんとも不思議な展開に恵まれている。つまり、10年前に私が乗ったのは若者の企画ではなく、ノアの箱舟だったのかもしれない。冗談にならないから人生は面白い。