梱包されたホスピス

昨夕、山口情報芸術センターYCAM)内にある市立図書館へ本を借り換えに行った後、外に出て何気なく周囲を見渡せば、目の前の病院が新築のための取り壊し準備が行われていた。私はその風景をしばらくぼんやりと眺めていると、頭の中に現代アートの巨匠の名前が浮かび、思わず「嗚呼、クリストだ!」とつぶやてしまった。

ちなみにクリストの作品の特徴は、何かを布で梱包することが作品となると考え、都市のランドマークになる建物や風景などを、布で一時的に覆うプロジェクトに取り組んできた。布で包み込むことで、表層的に見えるものを隠し、建造物などが持つ彫刻的な形の美しさを表現することで、日常に潜んでいる芸術性をあぶり出す。

だからこれはきっとYCAM開館20周年記念企画の一つ。生前のクリストと秘かに打ち合わせているはず。なんて、馬鹿なことを歩きながら考えていると、「梱包されたホスピス」というタイトルがひらめく。この作品は患者さんやその家族の方、医療関係者などの身心を包みこんで癒すことを目的に、見えないものを感じさすために行ったのだ。そんな合点がいく結論に至ったので、上機嫌で家路につくことができた。やっぱり空想力って楽しいものだ。