スプーン一杯のしあわせ

先週、ドラックストアで買い物をした後に、レジで商品を清算して、ウエストポーチから財布を取り出した時に、千円札を気が付かずに落としてしまった。目の前の店員さんはそのことを教えようと指を差した瞬間、後ろに並んでいた高齢の紳士が「落ちましたよ」と声をかけながら拾ってくださり、無事一件落着して事なきを得ることになる。

私はその方へ向かって頭を下げてお礼をしたところ、「当たり前のこと」と笑いながら目をほこぼらせて、明るい表情を浮かべられた。嗚呼、思わぬことで化学反応が起きる。本来は軽率な行動で由々しき事態を招いたのに、災い転じて福となすではないけど、春風のようなものがその場に漂い、微笑ましい雰囲気に包み込まれたのだった。

いわゆる仕合わせが成ったのだ。この言葉の由来どおり、何か2つの動作などを合わせられることで、めぐりあわせがいい状態になること。要するに仕合わせとは、お互いに好感を分かち合えなくてはならない。好運なことがまわりまわってくれば、居合せた人たちは素敵なものを実感できる。人生の素晴らしさを味わうには日常の些事を楽しんだらいい。スプーン一杯のことでも大切である。