勉強

先週、美術大学へ進学することのメリットについて尋ねられる。「何が良いと思われますか?」。もし、この質問を単純明快な言葉で語るとしたら「素晴らしい美術家になるためでしょう」しかない。美大に期待するものは本人を含めて誰もが心に秘めている本音である。ただし、みんなこのことはわかっているため、声高に唱えても有益な情報にはならない。みんなが知ってること以外を聴きたいと思っているはずだ。

そこで美大でどういうことを学べば良いのかが問いに対する答えになるのだが、これはハッキリ言って十人十色の世界。だから特効薬のような便利な指針や手段はない。すべてがオーダーメイド。人それぞれタイプによって異なるため、星の数ほど多種多様の経路がある。それだけ奥が深くて一言二言で言い表すことができませんよ、と断ってから持論について語った。

美術家を目指す人は純粋な精神の持ち主が多い。そのために思い込みが激しくて、また、頑固だと言われる一面を持っている。長所としてはプラス思考。自分はできると意気込むことで、実際にやり切ってしまうパワーが生まれる。反対に短所としてはこれしかないと決めつけること。その頑なさや偏りが判断ミスを誘い、新しい情報を拒んで発展性を失う。そして、ついには自我が強すぎて周囲に嫌われて孤立するのだ。どちらに転んでも紙一重。特に若い時代はジグザグするのが普通だ。そんな不安定な状態を支えてくれるのが美大だと思う。自分では思い浮ばない別のやり方や人の意見に耳を傾けることができる場所だ。自分より優れた美術家の存在に気付いて、素直に必要なものを学ぶことで伸びるためにある。つまり美大とは頭を柔らかくさせるためにある。変なプライドを捨てて、賢ぶらないで馬鹿(愚直)になるためにあるのでしょうと答えました。

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