温故知新

「臨書」とは、文字を書くことが上達するために、古典をお手本にして真似て習うことで、お手本に可能な限り似せて書くことを良しとされている。また、達人たちと同じものに挑戦することで、その書きっぷりが時代によって変化し、独自性のあることを肌で感じることで、新しい表現は生み出されると考えられていた。いわゆる温故知新と同じようなこと。昔からあるもので今に残っているものは、時代を超えた価値があるからだ。私たちはそんなすぐれた知恵の上に立っている。古きを訪ねて求めて新しきを知ることだ。

美術の世界も基本的には同じこと。過去の創造をお手本にして、これまでになかった世界を切り拓く。先人たちがどんなことをやっていたのかを知っていく。古いことをよく身に付けて、新しいことの発見に役立てる。そして、それらの中から自分らしいものだけを身に付けていく。すべてのことを模倣しようなどとしてはいけない。それでは素晴らしい技術が持てたとしても、頭に描きたいものが浮かばない体質になりやすい。お手本に依存してしまって抜け出せなくなるのだ。

つまり古いことをお手本にして学ぶことができたら、何もないゼロから独創性のあるものを創り出すより、もっと素晴らしいものができる可能性が高い。個性を尊重して自由にやることが推奨されているが、何も基礎のないところで自分らしい表現をしようとしても、今現在のその人のレベルがそのまま出るため、まぐれはあっても継続的な創造物にはならない。だからこそ古きことをよく知って、個性を伸ばす手段を発明していく。過去のすごいものをお手本にして、自分らしい世界を創作していきましょう!

f:id:gallerynakano:20190909155702j:plain