これぞプロ!

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私が高校生だった頃、萩で自ら登り窯を作って開業間近だった陶芸家が大病で困窮してしまったため、ここが医療費を集める事務局になったことがある。当時、このことを地元のマスコミが、こぞってニュースにしたおかげで、あちらこちらからたくさんの善意が届いて、風前の灯火の命を支えて励ました。それは本当に美しい人間ドラマだった。今ならクラウドファンディングで、より多くの人から集まったかもしれない。しかし、そのような文明の機器がなくても噂を聞いて、いても立ってもいられない人の口コミで広がり、ついには他県の見ず知らずの方からも現金書留が送られてきた。昭和のあたたかいぬくもりがあった時代。この数年前、日本の首相が「一人の生命は地球より重い」と言った言葉のとおり、人々がそれを信じて連帯することができたのだろう。

昨日、この陶芸家が予告もなくやって来た。つい最近も病院でお世話になったけど、持ち前の生命力で危機を脱したという。破天荒な人生は理屈や常識を超えていく。証明することのできない人生を歩む。これも仕事をやめて裸一貫で陶芸の世界へ飛び込み、不退転の覚悟で努力し続けたことで強くなったなのだ。目指すことは名誉やお金ではない。自分が気に入った作品を創っていくこと。馬鹿正直な人柄だから口は悪いけれど、85歳になっても少年のような純粋さは変わりない。だから初対面の若い陶芸家でも遠慮せずに本気で語り合う。そして、余程気に入ったのか次々に熱いエールを浴びせていった。二人とも陶芸に命をかけるほどの覚悟を持っている。陶芸は口で言うほど甘くないぞ!いつも過去の成功事例は捨てて、新しい創造への挑戦者であれ!などなど、短い時間に多くのことを学ばせてもらいました。ぜひこの次も芸術とは何かを叩き込んでください!

■吉祥展&アートカレンダー展 臼杵万理実、岸透子、紀田秀夫、佐藤文恵、てご屋、はやしいくみ、舛井美佐江、村上真実、大和佳太、和紙工芸シオン 2019年12月7日(土)~25日(水) 11:00-18:00