敬う

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本日より始まる「県美界隈展 『花』、Y氏とともに」。このY氏とは美術界のレジェンドの吉村芳生さんのことだ。私は高校生だった時に初めてお出会いし、その後はなんとなく上手く交われなかったが、晩年になって「山口の美術を力を合わせて盛り上げようよ!」と声を掛けられ、個展などに出展してもらったり、「美術の世界へ夢を持って生きていこう!」と、ここに集まる若者に何度も激励していただく。30代半ば、山口市徳地へ戻って画業だけで生計を立てるために、自ら積極的に評論家や画商たちへ売り込み、大いに作品をアピールし続けてみたものの、その成果は一進一退を繰り返し、なかなか思うようにならなかった。そんな自身の苦い経験があるからだろう。どんな人でも若い時はもっぱら修業時代。山頂まではすべて登り道になるのと同じように、美術家も厳しい試練の連続になるのは当たり前。失敗しても気にすんな!とエールを送って、美術へ夢を持って生きろと背中を押してくれた。

7年前の12月、突然の訃報に接する。あまりにも急な知らせ。現実のことだと思わなかった。もしかしたら今の変わらないのかも。これまで遺伝子に組み込まれた余韻と、残された作品があるから生きているとしか思えない。それはこのたびの参加者も同じ気持ちである。吉村さんと同じ空間に作品を展示することに大きな緊張を感じていた。あれこれととがめられる心配はまったくないのに、あたかも吉村さんがいるような緊張感が伝わってくる。つまり吉村さんの功績を敬わっている。吉村芳生という美術家の素晴らしさを認めて、そこから積極的に何かを吸収しようとする姿勢があるのだ。レジェンドとぶつかり稽古をして、創作に役立つヒントを求める。すぐに答えが出なくても、この経験は未来に繋がるはず。熱い魂に触れて熱い魂になったら、吉村さんと同じ熱い人生になるだろう。

■HEART2019の関連企画 県美界隈展 『花』、Y氏とともに 2020年2月13日(木)~3月1日(日) 11:00-18:00 火水定休