さくらさくらさく さくらちるさくら

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人生は一期一会。ファーストタッチのビビッときた衝撃はそののち訪れることはない。一番最初の時以上の鮮烈な印象や興奮することは二度と味わえないもの。なにごとも出会ったその瞬間を逃したら、次に同じように巡り合うことは難しい。レオナルド・ダヴィンチさんも「幸運の女神には、前髪しかない」と言っている。チャンスがやって来たら逃さずつかむしかない。たった一度しかないこの機会を活かすのだと意識を高めること。人生を謳歌するために大切な極意である、目の前を漂っているものを引き寄せて、自分としっかりと結びつけることが大切だ。

しかしながら毎年春になって桜の花を見ると素直に感動するもの。生まれてから何度も何度も見たことがあるのに、ついつい「今年の桜はこれまで一番最高だ」と平気で口走ってしまう。なぜ、そのような心境になることができるだろうか。それはおそらく桜が瞬く間に散ることを知っているから。明日にはこの美しさが見られない危機感を抱いている。つまり桜に対しては特別な感情が湧いてくるもの。いつもより緊張感が強まることで敏感に反応できる。目に焼き付けようと遺伝子を活性化させて、感性のアンテナを鋭く尖らして精度が高まっていくのだろう。

「さくらさくらさく さくらちるさくら」。漂泊の俳人種田山頭火の句。桜の木の前で「咲くにしろ、散るにしろ、愛しさと切なさがあっていい。いつも心を熱くしてくれてありがとう!」と、桜の花に敬意を表している姿が目に浮かんできた。パッとひらめくものを見逃さず、「一期一会」の本質を豊かに感じさせてくれる。これは私なりの解釈。実際ところは違うかもしれない。だけど、桜はいくつになっても心を熱くする魅力で溢れている。日本人に根付く心の世界をわかりやすく表現したもの。この句には大和魂の基本が集約されているのかもしれない。