ピンチとマブダチ

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ギャラリーが開店したのは4月1日。なんとエイプリルフールに始まった。これは偶然なのか必然なのかはよくわからない。だけど、私自身は365日の中でもっともふさわしい日だと思っている。なぜなら美術はリアルな世界をそのまま表現するのではない。リアルな世界に作者のエッセンスを盛り込んで、見えにくかったり伝わりづらいものをあぶり出す。創作物を通じて観る人や受けとめる人の感性に刺激し、その人にしかない価値観に気づかせてくれる。本当だと感じてしまう想像力(嘘)によって真実が見えてくる。「嘘から出たまこと」ではないけど、結果として本物より本物らしく感じられるから、やはり美術作品とは奥の深いものなのでしょう。

そんな4月1日。いつも記念展でお祝いしている。それは1年を積み重ねることが実に厳しいからだ。この世界に生きていくためには、近江商人の心得のように、「美術家」、「コレクター」、「ギャラリスト」の三方良しでなくてはならない。一見さん相手にやりくりできる商売ではない。また、人口数が少ない一地方で運営するには、絶対数の美術ファンが足らないため、なんとか創意工夫して生き長らえいる。ただし、ピンチに強いわけではない。ピンチの連続ばかりだから、ピンチになっても堂々とできる。残念なことにピンチとマブダチなのだ。

しかしながら経営者としては失敗の連続。ここまでなんとも波乱万丈だった。決して行き当たりばったりではない。ギリギリの線で経営するしかなかった。だから運が良かった。自分でもある時点からはそう感じていた。いや、そういう流れだと信じていた。どんなに大変であっても、運がいいと思うことで、バイタリティは育まれていく。つまり、ギャラリーは多くの他力に支えられている。結局は当たり前なことを繰り返しやっていくだけ。一歩引き下がって有難いと考えよう。人は感謝することで成長していける生きもの。世の中は多くの見えない力によって繋がっている。いつもおかげさまの精神で生きることで運がやってくるのだろう。