美術品の清玩所であります

f:id:gallerynakano:20200604224339j:plain


昨日の夕方、突然、「うん、このポリシーはわかる」と、岸田劉生の画集を熱心に見ていた岸透子さんから声がした。そこでどのページのことですか?と尋ねてみたら、劉生が活動記録にあった言葉に思わず共感したのだと言った。それは「展覧会の見方とは何であるかと云えば、いふまでもなく、美術品の清玩であります。せいは浄い、ぐわんは玩ぶ、即ち楽しむといふ字で、美術品を鑑賞するといふことであります。そのことに全部尽きなければならない。精神的な修養とか、それからまたいろいろそれによって御座いませうが、総て二の次のもので、展覧会は結局絵を楽しむといふ、美術品の清玩所であります」という文章だった。

なるほど、たしかに作品鑑賞をやれ勉強のためだとか、素敵なセンスを磨くためにするなど、その効用ばかりを期待し過ぎていたら触れた感覚は残らない。どこにどの作品があったくらいは記憶できたとしても、自分なりの視点で自由に楽しもうと思わなかったら、新しい感性を引き出すことができないだろう。つまり美術鑑賞とは正解不正解を求めようとしてはいけない。自分の美術への興味を少しでも多く湧かせるために、一歩でも半歩でも世界観に没頭してみよう。そう、作品に込められたエネルギーをより強く感じるために、身体をリラックスさせて自然体のまま、すべて包み込むように受けとめることが大切になる。人それぞれ楽しいと感じるものはみんな違うもの。展覧会で楽しいと思う美術作品も違ってくる。だからこそ自分らしい価値観で作品を味わい、楽しい気持ちを肯定していきましょう!

■岸透子 水彩画展 2020年5月21日(木)~6月14日(日) 11:00-18:00  お休み 月・火・水