口伝

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昨日まで県立美術館で行われた「ハマスホイとデンマーク絵画」展。新型コロナ感染症の拡大防止を踏まえて、会期は残り2週間だけに短縮されてしまった。そのため私はスケジュール的に難しくなって、作品鑑賞を泣く泣く断念せざる得なかった。特に県美の学芸員さんが年月をかけて企画した展覧会なので本当に残念としか言いようがない。しかしながら、幸いにも画集を手に入れられて良かった。これを見ながら自分なりのイメージを膨らませて楽しむことにする。

そんな開き直っていた時、同じ名字の寿子さんがやってきて、県美で観られたハマスホイ展の感想などを語ってくれた。入館するまでに適切な対応が徹底されていたこと、展示会場では鑑賞者へ最善な運営方法を目指して努力していたこと、そして、「やっぱり期待通りだった!」と、画集を片手にハマスホイなどの作品の素晴らしさについて熱く語った。おおー、限られた情報では浮かび上がらないことまで、その余韻の波動によって感じさせられる。平面的な厚みのない発想から立体的で広がるようなエッセンスを醸し出す。さすが寿子さん!どこまでも大好きな美術のことなら、イマジネーションをくすぐる生き生きとした言葉が出てくる。好きになれるものがあるのは、その人のセンスの表れだと言えるもの。彼女のハマスホイへの憧れと愛情のこもったお話しは、とても楽しくて感性を揺さぶってくれたのだ。

つまり、たった一人の大きな感動は自分だけではなく他の人にも伝わっていく。例えみんなが知っているような常識的なことであっても、その人のその人によるその人ならではの楽しみ方がある。どんな作品鑑賞の感想も自由なもの。なぜなら誰でも表現の自由は保障されて、自分が自分であるために語っていいのだ。そう、自分が知らないことを教えてもらう時は、謙虚な気持ちで相手の言葉を味わうことで、新しい文化をチャージすることができるだろう。感動力は自分も相手も成長させてくれるもの。親愛なる語りべ寿子さんに晴れ晴れしいエネルギーをいただいた!