我思う故に我あり

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このところ再び注目されている天才高校生プロ棋士藤井聡太七段。私は子供の頃から将棋で遊んでいたので、今も新聞などで棋譜(対局の指し手)を見ることを趣味にしている。中でも投了図(勝敗が決まった棋譜)は理論的ではなく感覚的に触れることで、戦った棋士の葛藤と苦悩の足跡が見えてくる。つまり細かい駒の動きを追って見るのも良いけど、ざっくりと感性で捉えても本質は十分に味わえる。理路整然とした具体的な情報ではない、抽象的に感性を使って絵のように見ることで、自分らしいイメージで楽しむことが大切だと思う。いろんな視点からポジティブに面白がることで発見は増えて、胸をワクワクさせる好奇心は漲っていくはずだ。

それはさておき、本題の藤井聡太七段の棋譜は驚かされることばかり。昔から定跡と呼ばれて研究されてきた最善の指し手があるのだが、それを遥かにこえる異次元的な手筋を見ることが多い。これまでの将棋になかった戦い方で、だからこそ、あの若さで将棋の8大タイトルの2つに挑戦している。大胆な捨て駒で相手陣を切り裂いて、攻守の入れ替わりの激しいギリギリのつばぜり合いを、ほんのわずかの差で巧みに勝ち抜いていく。ハラハラドキドキさせられながら、最後はアメリカ映画のヒーローのように、ズバッと音のする一手で勝っていく。

そんな藤井聡太七段が「序中盤は茫洋(広くて見当のつかない様)としていてなかなか捉えづらいですけど、コンピュータは評価値という具体的な数値が出るので、活用して参考にすることでより正確な形成判断が行えるようになると思います」と語った言葉に将棋界が発展していることを肌で感じる。人工知能将棋を使ってトレーニングしている時代なのだ。人間にはない発想と戦うことで、相手棋士にはない発想を武器にしていく。ちなみに現代の美術界も同じようなもの。もうすでにこうなっているだろう。ただし、コンピュータに答えを求めるのではない。自分の答えをコンピュータを利用して出している。あくまでも最後は人の力でやるから素晴らしい!