守破離

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松陰先生のお言葉に「大よそ十歳前後より四十歳ころまで、三十余年中学問を勤む。しこうして其の最も自ら励むことは中十年にあるなり」がある。これは、10歳前後から40歳くらいまでの約30年は、ただひたすら目標へ向かって勉強することが大切だ。特に20歳からの10年間にかけては一番の学び時で、ここで我武者羅に頑張ってやらなければ、その後は伸び悩んで大したことができないという意味だ。

当時の平均寿命の正確な数字はわからないけれど、おそらく40歳よりは低い数字になるはず。仮に40歳だったとして、改めてこの言葉を読んでみると、とにかく一度学ぶことを始めたら、生きている内はとことん学びなさい、と言いたかったのだろう。ちなみにこの年齢条件の設定を現代に置き換えるとしたら、「中十年」にあたるのは20歳から50歳までの30年間だと考えている。なぜなら、この期間なら気力も体力も漲っていて、自分らしい夢を叶えたいと願うのなら、いくらでも努力して掴むことができるし、掴めるための土台を作っていけるからだ。例え30年間をフルにやることができなくても、ここで様々ことを鑑にして学習する癖をつけると、50歳からの円熟期の軌道にすんなりと乗れるはずだ。

つまり、10歳から20歳は学校を中心とした社会で基礎や基本を学び、その後の土台となるものをこつことと固めていくこと。20歳から50歳はトライアンドエラーで経験を重ね、土台を守りつつも応用や改善を加えていって、独創性が高くなるように創意工夫していくこと。そして、50歳から80歳頃までは、それまでやってきたことに一切捉われず、在るがまま思うがままの境地で、自由な心で新しいものを創って生きることだ。いわゆる武道や茶道の精神で用いられる「守破離」をベースにして、ものごとを学ぶ基本的な姿勢、または取り組む順序について、松陰先生らしいお言葉で人間の本質を表現されたのだ。私はそんな風にこの言葉を解釈している。