能はざるに非ざるなり 為さざるなり

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6年前の文化の日、近くの商店街であったイベントで、噂には聞いていた若者と初めて出会う。職業はイラストレーター。この日は生業にしている似顔絵で人々を惹きつけていた。一見は尖がっている。しかし、実際はとても人懐っこい。絵の依頼主を明るい雰囲気で包み込み、その人らしい個性を活かした絵に仕上げていた。私は彼の行動を見ながら、やや粗削りだけれど、プロ根性の高さに感心した。創作の基本とは、誰かの評価よりも自分自身の充実感を満たすこと。1枚1枚手を抜かずに真面目に描くことで、自分の望む作品が創り出すことができる。その一瞬に集中する姿に目が奪われたのだ。

ちなみに誰でもプロになれるかどうかはやってみなければわからない。だけど、子供の頃からなりたいイラストレーターという夢があるのだったらやるしかない。今さら才能があるとかないとか言っても仕方ない。自分で自分の限界を決めてはいけない。とにかくあらゆる可能性を信じて努力していくこと。夢を叶えるために様々なことに創意工夫することが大切なのだ。若者はこの真理については頭ではわかっていないけど、どうしたらプロになれるのかを感性で察知している様子。なんだか面白い人材が出てきたのだと思った。

その後、若者との交流は盛んになる。子供の頃から雑誌に投稿するほどの腕前で、地元ではそれなりに名をはせていたものの、高校時代は一転してスランプに陥って苦渋を味わう。専門学校で再び創作意欲が生まれて、卒業後は自ら都会の雑誌社などにイラストを持ち込んで売り込んで人間関係を開拓していった。そして、4年後にそれまで稼いだお金を全て注ぎ込んで「りおたの似顔絵ワールドカップ展inアスピラート」を企画。3分の1をスペースを借りて、サッカーW杯に出場したチームの選手のイラストを展示。好評を博した。私はこの作品展は残念ながら観ていない。だからこのたびの作品展をとても楽しみだ。31日(金)からのアスピラートでの「りおたのスポーツ名場面集 2020」が盛会になることを祈っている。