精進あるのみ!

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イソップ寓話の「ウサギとカメ」。圧倒的に足の速いウサギは自分が勝つと思って油断し、諦めずに休まずこつこつと進み続けたカメに負けてしまう物語。このお話しの教訓は素晴らしい才能があっても、自惚れていい加減にやってしまって、結局のところ可能性を駄目にして失敗する人がいる。反対にそんなに才能なんかはなくても、真面目に辛抱強い人は地道に頑張っていくため、自分よりも遙かに才能がある人に勝つこともあるということが言いたいのだろう。

この7年間、造形作家 稲田絵美さんをそばで見ていると、まさに彼女こそイソップ寓話のカメさんだと思う。決して派手なパフォーマンスで作品をアピールしようとしない。まず第一に丁寧に細部までこだわったものを制作し、自分が納得したものを世に送り出そうとしている。見た目の華やかさよりも質実剛健さがモットーだ。これはおそらく美術に対する姿勢だけではない。さまざまなことにも一貫しているはず。なぜなら彼女は案内状や納品書、展示の飾りつけなどに至るまで、とにかく最善を尽くして何度でもやり直す。小さなことを馬鹿にせずに積み重ねることで、少しでも恥ずかしくならないように心掛けている。どんなこともじっくりやらなければできないタイプと覚悟しているのだ。

つまり、私は器用に世渡りして生きられるタイプじゃない。いくら見栄えがいいものを創ったとしても、自分の目や耳などで集めた情報を基礎にしなければ、単なる張りぼてで見合う実力になった訳ではない。美術家になる夢を持つことは大切なこと。しかし、夢に酔って現実逃避してしまわず、今できることをやっていくしかない。夢や野望ばかりをカッコよく語っていても、なにも達成することはできないのだ。こんなふうに社会で働いた経験が謙虚な気持ちで取り組める力になっている。もちろん、まだまだ多くの課題はあるけれど、それは成長するために必要なもので、彼女自身、すべてを受け止めて学びにしそうだ。これからも幸運を祈っている。ファイト一発!