「美術家は時に原始人に立ち返って自然を見なければならない。宗教家は赤子の心にかえらねばならない。同時に科学者は時に無学文盲の人間に立ち返って考えなければならない」と語ったのは、科学者であり文豪でもある寺田寅彦。これまで常識とされていたことに拘らず、あらためて様々な視点から見つめ直すこと。何ごとも起きている事実から判断せず、こうあるべきだという固定概念を疑ってみる。経験をたくさん積み重ねているうちに、身に付いてしまった思考の垢を落として、もう一度、子どものように素直な目で見つめていくこと。真っ平な先入観のないフラット心で、興味あることへの実直な発想力が大切だと私は解釈している。
つまり、なにごとでも始めたばかりのビギナー時代を思い出そう。この頃はやればやるほど技術的に目覚ましく進歩する。熱心に脇目もふらず一つのことに打ち込んでいける。新しいことを次々に吸収してメキメキと上達できるのだ。しかしあるレベルに達っしてくると、成長への手応えはあまり感じなくなってくる。それなりに常識が身に付いたため、固定観念にとらわれて斬新な発想が浮かばなくなる。いつの間にやら周囲の世界に影響されて、人とは違う個性があることを見失うのだ。だから始めた時の初心を忘れていけない。時々はスタート地点にあったことを振り返り、原点を思い出してやる気を磨いていきましょう！
■難波瑞穂展 これから私はあなたとともに 2020年9月18日（金）-27日（日） 11:00-18:00 （最終日 17:00まで） お休み 9月22日（火）、23日（水）
